銀の狼



     2005年   11月  22日・ 11月  23日

               

初の、本命地元公演と言うことと、今回はいろいろ考察出来る作品と言うことで、
久し振りに、感想書きたいと思います。
やはり、まず人物を追って…。

シルバ(朝海 ひかるさん)

見た目とか、初演との歌唱の違いは、
テレビも見ていない私には、想像も出来ませんが…。
彼の、苛立ちと怒りが前面に出た役作りに思えました。
何て言うか、過去を知りたい、己を見つけたいが、強いの。
己が、無い不安感…!?は、少なかった。
クールで、ドライって何処かでも読んだけど、
過去への渇望!?渇きより、苛立ち。

う〜ん、うまく説明できない…。



ミレイユ・デュロック(舞風 りらさん)

強い女性だな…。
いや、強くなってしまったのかも知れない。
父親の死に直面した時は、誰かに縋らずに生きられない、お嬢様だった。
でも、心ならずも、夫の共犯者になり、しかしその事に、疲れ果てて居た。
出来るなら、逃げ出したいと思い続けて出来なかった。
彼女の、虚無感って言うのかな!?
それを、埋めて、自分が何を望んだか、何をすべきかを、
シルバ(ミッシェル)との、再会から取り戻した。
本当に、生きる事が出来た。

あぁ、言葉が見つからない…。


レイ(水 夏希さん)

彼は、シルバを、いやミッシェルを殺せなかった時から、
彼が、彼の命が生きることを、選んだ時から、
不安と安心の、混じり合った心のままに、
シルバと共に生きて来たんだろうな…。
彼が、シルバを殺し屋として、育てたのは、
それしか教えることが、出来なかった。
そして、いつかその時、シルバの復讐の相手として向き合う事を覚悟してたんだと思う。
彼の、死に様は見事に、己の想い描いた物に近かったと、信じたい。



ジャンルイ・デュロック(音月 桂)

そして、彼…ジャンルイ。

どうしても、初演の影に引きずられて、自分の方向が見つける事が、出来ない。
それが、歯がゆいと言うか、初演を知っている人達から、
こうあって欲しいと、言われ続けた。
そんな気がします。

で、私から見た、音月のジャンルイは、己の為に国を手に入れる事も、
人を抹殺する事も、悪いと思っていない、男。
自分しか、信じて居ないだろうし、総ての人が自分に跪くのは、当然と思っている。
そんな、散漫で、傲慢な人物。
独裁者に、なろうとして、なりえなかった…。
野心と言う、セリフで処理されているけど、
彼には、野望と言う表現のが、合っている気がします。

そして、彼の唯一の誤算は、ミレイユを殺せなかった事。
愛して居たんだと思う。
彼なりに、不器用でその表現のしかたさえ分からないままに…。
自分の野望を、達成する為に、彼女の存在が危険である事に、
気付きながら、最後まで殺せなかった。
国境を越えて来るであろう、彼女を殺せと命じる事に、躊躇いは無いけど、
その後、一瞬椅子に座る時に、僅かな迷いがあった気がします。
「疲れていたんじゃ!?」と、言う意見も友人から出たんだけど、
その、疲れている事は、総てが思うようにならない苛立ちと、
ミレイユを、消してしまう事を命じた、後悔!?
みたいな物を、後から感じました。
あぁ、あそこ…って…。

後、ファンならやってくれたと、唯一思ったであろう、
最後に、ミレイユに、キスを迫る場面。
「愛していた…。」の、セリフの意味も、初演とは別物になっているんじゃないかな!?
初演は、愛して居たから、罪を犯した。
罪を、罪と理解しながら、後戻りは出来なかった男。
愛する意味も、言葉も理解できていたと思う。
でも、今回は、理解出来ていない。
だが、ミレイユに最後に告げる言葉は、「愛していた…。」しか無いんだと思う。
強引に、抱きしめても、拒絶される事も、
抵抗される事も、分かっている。
しかし、最後の時に(この場合ミレイユの)そうする事が、当然だったんだろうな。
抵抗されて、唇!?もしくは…(スミレコードにて、自粛)を、噛まれて血を拭ってる仕草が、
そんな、最後まで意のままにならない、ミレイユを楽しんでる。
あの、笑みは、なかなかぞくぞくさせてくれました(笑)

でも、彼の悪党っぷりも、強さも小さくまとまってる。
もっと、大物の悪党として、吹っ切ってくれたら、面白くなるんだけど…。
何処かで、止まってしまう、突き抜けて来ないの…。
初演と、違う役作りで行くなら、こうしたいって方向に、しっかり絞り込んで、
表現して欲しかった。
ジャンルイが、小物になってしまって居るからか、最後にシルバに殺されても、
終わった感じがしない。
復讐は、達成された筈なのに…。

きっと、桂ちゃんも最後まで、迷って悩んで、
役を掴みかけて、取り逃がして終わる気がします。
未熟ながら、せめて固定の劇場での公演なら、
自分の役としての、方向が掴めたかも…。
それが、ある意味残念です。


                                    Megu